講演会・座談会記録集

講演会・座談会記録集

第20回 日本緩和医療学会学術大会 ランチョンセミナー17

悪性胸水に対する胸膜癒着療法

ユニタルク®による胸膜癒着術

儀賀先生 笹田先生演者

2015年6月20日に開催された第20回日本緩和医療学会学術大会のランチョンセミナーでは、東京都済生会中央病院呼吸器内科の笹田真滋先生が「悪性胸水に対する胸膜癒着療法」について、ユニタルク®による治療の実際を中心に講演された。

(2015年11月作成)

目次

がん性腹膜炎・悪性胸水への対処法

悪性胸水が貯留した患者を診る機会は多く、苦痛を訴えるときはドレーンを挿入して排液し、苦痛の軽減を図る。しかし、この状態でドレーンを抜くと悪性胸水が再貯留し、再び苦痛を訴えるようになる。胸膜癒着術は、こうした患者のQOLを向上させるための有効な手段である。
悪性胸水の原因で最も多いのは肺がんであるが、他にも乳がん、悪性胸膜中皮腫など種々のがんによって発症する。2014年版の「日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン」では、がん性胸膜炎・悪性胸水への対処法について図1のように記載しており、胸水貯留が認められ、症状があれば胸腔ドレナージが行われる。また治療については、胸腔持続ドレナージがグレードAとして強く勧められており、胸膜癒着術についても同様にグレードAとして積極的に行うことを推奨している。胸水貯留による症状がない場合でも、胸水に長期間貯留して副作用が遷延する薬剤を投与する場合などは、胸腔ドレナージが必要な場合がある。胸膜癒着術時に使用される薬剤は、日本ではOK-432(ピシバニール®)が標準薬として使用されてきたが、2013年からは新たにユニタルク®(滅菌調整タルク)も使用できるようになった。

日本緩和医療学会ガイドライン

2011年版の「日本緩和医療学会ガイドライン」では、悪性胸水への対処法として細径カニューレを用いた胸水穿刺による排液を推奨しているが、同時に穿刺の繰り返しによる気胸、膿胸への注意も促し、生命予後や全身状態を加味した選択が望ましいとしている。胸膜癒着術については、予測される生命予後が1ヵ月以上あることが望ましいとしており、1,499例を対象とした36件の無作為化比較試験のレビューで、癒着剤としてタルクが再貯留の予防に有用であったことから、ある程度の予後が見込める場合は胸膜癒着術を考慮し、タルクを推奨している(表1)。

また、肺がん患者に対して、診断早期から標準的がん治療に緩和ケアを加えることで、QOLやうつ症状が改善するだけでなく、生存期間の延長が認められたとする報告(Temel JS et al:N Engl J Med, 2010; 363 (8) : 733-742)もあることから、緩和ケアの一環として悪性胸水への対処を積極的に行うべきと考える。
タルクによる胸膜癒着術の成功率は88%~100%と高い(表2)。副作用は他の癒着剤と同様に発熱や胸痛が認められ、特にタルクとOK-432についてはARDS(急性呼吸窮迫症候群)が報告されているが、再発率、副作用、費用対効果を総合的に考慮するとタルクの有用性は高く、ATS(米国胸部疾患学会)やACCP(米国胸部医学会) のガイドラインでも推奨さてれており、日本でも保険適用になったことの意義は大きい。

タルクの効果的な使用法

胸膜炎になると臓側胸膜と壁側胸膜の隙聞に悪性胸水が溜まり、神経が刺激されることで痛みを生じるが、この悪性胸水を抜いて肺を膨らませ、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させることで痛みを軽減させるのが胸膜癒着術である。滅菌調整タルクは生理食塩水を用いて懸濁液として使用することから、使用に際しては沈殿を防ぐためにしっかりと振り、注入前にも再度しっかりと振ることが望ましい。また、添付文書には「懸濁液を胸膜腔内に緩徐に注入すること」とあるが、30秒ほどで注入するのが良いと思われる。国内第Ⅱ相試験では、16~24Fのダブルルーメンカテーテルを使用したが、自分たちは20Fのダブルルーメンカテーテルを用いている。
また、タルクを50mL注入した後に生理食塩水50mLを追加し、合計100mL注入した方が隅々までタルクが行き渡る。注入後には、まず仰臥位、その次に側臥位、その後に腹臥位というかたちでそれを二回転15分おきに行う。さらに患者がうつ伏せ状態の時は、タルクを注入してから膝を立て、肺尖部までタルクを行き渡らせるようにする(図2,3)。その後、1日排液量が150mL以下になったら抜管する。

ユニタルク®国内第Ⅱ相試験成績(医師主導治験)

全国6施設においてユニタルク®の国内第Ⅱ相試験が実施された。対象患者は、“がん性胸膜炎” で “呼吸困難等” の症状を有し、ドレナージチューブによる排液で十分な “肺の再膨張” が認められた患者30例であった。有効率は83.3% (25/30例)で(図4)、呼吸困難や胸痛の改善が見られた。安全性については、CRP上昇が80%、発熱が55.3%にみられたが、重篤な副作用は認められなかった。

質疑応答

Q:
沈殿の早いタルクを上手に拡散させるポイントは何でしようか。
A:
体位変換を行う際にタルクの移動順路を想像して行うのが大切で、膝を立てる、頭を下げる、回転を増やす、角度を増やすなどの工夫が重要です。
Q:
タルクの有効性を上げる工夫を教えてください。
A:
ドレーンを入れる位置やドレーンの太さ、肺の拡張時期やタルクを注入するタイミング、十分に排液を行うなどについてレトロスペクティブに解析し、問題点を洗い直すとよいと思います。大切なのはきちんとドレナージを行い、肺が十分に広がっていることで、それが実現できれば、かなりの確率で効いている感触を持てると思います。
ページの上部へ