製品情報

薬物動態

1.吸収

(1)胸膜腔内単回投与(ラット、イヌ)

ラットにNPC-05 400mg/kgを左側胸膜腔内に投与したとき、胸腔内臓器(投与側及び反対側の肺及び胸壁、心臓及び横隔膜)にタルク粒子の分布が認められました1)。また、イヌにNPC-05 200及び800mg/kgを左側胸膜腔内に投与したときにも、投与後28日の全匹の投与側及び反対側の肺にタルク粒子の分布が認められました。したがって、NPC-05の一部は胸膜腔から吸収されると推察されました2)
ラットに粒子径未調整のタルク10及び20mg/匹を胸膜腔内投与して、胸壁、肺及び脳におけるタルク粒子の分布を偏光顕微鏡による複屈折粒子写真で観察したところ、胸壁、肺及び脳のいずれにもタルク粒子が認められ、胸膜腔内投与したタルク粒子が胸膜腔から吸収されることが示されました3)(「分布」を参照)。

(2)経口単回投与における消化管からの吸収(ラット、マウス、モルモット、ハムスター)4,5)

ラット、マウス及びモルモットに3H-タルク、ハムスターに放射化タルク(60Co及び46Scのγ線を指標)を経口投与した検討から、タルクは消化管からほとんど吸収されないと推察されました。

(3)吸入単回投与(ハムスター)6)

ハムスターに放射化タルク(60Co及び46Scのγ線を指標)を2時間、鼻のみに曝露したとき、曝露量の6〜8%のタルクが肺胞内に分布し、肺胞内タルク量の消失半減期は7〜10日であり、曝露後4ヵ月で肺胞からほぼ消失しました。

(4)吸入反復投与(ラット、マウス)7)

ラット及びマウスに、3濃度(2.3、4.3、17mg/m3)のアスベストフリーのタルクエアゾールを6時間/日、5日間/週で4 週間(20日間)反復吸入曝露したとき、肺組織単位当たりのタルク重量はタルクの曝露濃度にほぼ比例しました。

2. 分布

(1)NPC-05の胸膜腔内単回投与(ラット、イヌ)

ラットにNPC-05 400mg/kgを左側胸膜腔内に投与したとき、大部分は胸膜腔内に残留しましたが、胸腔内臓器(投与側及び反対側の肺及び胸壁、心臓及び横隔膜)へのタルク粒子の分布が確認されました。その他の臓器及び血液中にはタルク粒子は認められませんでした1)
イヌにNPC-05 200及び800mg/kgを左側胸膜腔内に投与したとき、大部分は胸膜腔内に残留しましたが、投与後28日のイヌ全匹の投与側及び反対側の肺にタルク粒子が認められました。肝臓、腎臓及び血液中にはタルク粒子は認められませんでした2)

(2)分布への粒子径の影響(ウサギ)

ウサギに、標準粒子径タルク(平均最大粒子径:8.36μm)及び大粒子径タルク(平均最大粒子径:12.00μm)200mg/kgを右胸膜腔内に投与したとき、投与終了後24時間及び7日において標準粒子径タルク群の肺に多くのタルク粒子が検出されました。一方、縦隔及び心膜には両群ともにタルク粒子が検出されました。また、標準粒子径タルク群のみに肝臓にタルク粒子が検出されました。組織中に認められたタルク粒子は、ほとんどが最大粒子径10μm以下でした8)
ウサギに、小粒子径タルク(平均粒子径4.2μm)及び混合粒子径タルク(平均粒子径25.4μm、6.66μm以下の粒子を 10%含有)400mg/kgを右胸膜腔内に投与したとき、小粒子径タルク群の左右胸腔内の肺に著しいタルク粒子の移行が認められました(右肺、左肺ともP<0.001、vs混合粒子径タルク、ステューデントのt検定)。また、肝臓及び腎臓にも小粒子径タルクの著しく高い移行(P<0.05、vs混合粒子径タルク、ステューデントのt検定)が認められましたが、脾臓では大きな差異は認められませんでした9)

(3)胎盤通過性(参考)

タルクの胎盤通過性に関する報告はありません。しかしながら、胸膜腔内に投与された10μm以下の粒子径のタルクの一部は吸収され組織中に分布すると推察される3,8,9)ことから、本剤の胎盤通過性は否定できません。溶解性の面からは、タルクの主成分である含水ケイ酸マグネシウムは、本剤の投与経路である胸膜腔内の胸水(pH7.2〜7.4)にほとんど溶解せず、ごく一部が溶解するのみで、生成するオルトケイ酸モノマー及びマグネシウムイオンが吸収されてもごく少量であることから、本剤を胸膜腔内投与してもオルトケイ酸モノマー及びマグネシウムイオンの胎児への移行はないものと推察されます10-13)

3. 代謝10,11)

タルクの主成分である含水ケイ酸マグネシウムは、経口投与したとき胃液中の塩酸と反応してオルトケイ酸のモノマー、オリゴマーその他の様々なポリマー及びマグネシウムイオンを生成します。モノマーの生成比が高くなるにつれて腸管における吸収量は増加します。血漿中のケイ素はほとんどがオルトケイ酸モノマー[Si(OH)4]として存在します。胸膜腔内投与した本剤は、一部がタルク粒子として吸収され、吸収されたタルクが体液に溶解した場合は、オルトケイ酸モノマーとマグネシウムイオンを生成すると推察されます。

4. 排泄

(1)NPC-05の胸膜腔内単回投与(ラット)1)

ラットにNPC-05 400mg/kgを左側胸膜腔内投与したとき、尿及び糞中へのタルク粒子の排泄は認められませんでした。

(2)経口単回投与(ラット、マウス、モルモット)4)

ラット、マウス及びモルモットに3H-タルク50mg/kg、40mg/kg及び25mg/kgを経口単回投与したとき、投与終了後4日までに投与放射能の約95%以上が糞中に検出されました(マウスは大腸も含む)。尿中には投与放射能の0〜1.67%と微量の放射能のみが検出されました。
ラットに3H-タルク50mg/kgを1日1回、6日間、反復経口投与したとき、投与終了後10日の糞中には放射能は検出されませんでした。

(3)吸入(ハムスター)6)

ハムスターに放射化タルク(60Co及び46Scのγ線を指標)を2時間、鼻のみに曝露したとき、糞中には高い放射能が検出され、曝露後0〜21時間及び21時間〜4日の糞中の平均放射能排泄量は、それぞれ106±53μg及び350±292μgタルク相当量でした(平均±標準偏差、各n=4)。尿中には、46Scの放射能は検出されず、タルクから溶出した60Coが、吸収、排泄されたと推察されました。

主要文献
  1. 社内資料: ラットの組織中分布・排泄試験
  2. 社内資料: イヌの組織中分布試験
  3. Werebe EC, et al. Chest. 1999; 115: 190-3
  4. Phillips JC, et al. Fd Cosmet Toxicol. 1978; 16: 161-3
  5. Wehner AP, et al. Fd Cosmet Toxicol. 1977; 15: 453-5
  6. Wehner AP, et al. Fd Cosmet Toxicol. 1977; 15: 213-24
  7. Pickrell JA, et al. Environmental Research. 1989; 49: 233-45
  8. Ferrer J, et al. Chest. 2002; 122(3): 1018-27
  9. Genofre EH, et al. Respir Med. 2009; 103: 91-7
  10. 食品安全委員会添加物専門調査会 添加物評価書 ケイ酸マグネシウム2010年1月
  11. O’Neil MJ, et al. The Merck Index, 13th ed., 2001; p.1017-8
  12. Calomme MR, et al. Biological Trace Element Research. 1997; 56: 153-65
  13. Carlisle EM, et al. Biochemistry of the Essential Ultratrace Elements 1984(chap 11); 257-91(262-4)
ページの上部へ